「花嫁は20歳、花婿は12歳!」森薫『乙嫁語り』1巻、海外のレビュー

19世紀初頭、中央アジアの一地方、20歳のアミルが結婚した相手は12歳の少年カルルクだった―――
『シャーリー』、『エマ』で人気を博した森薫によるアジアを舞台としたとある一部族の営みを描いた人気作『乙嫁語り』が『A Bride's Story』というタイトルで海外でも出版されました。
早速いくつかのレビューがついていたので紹介します。
引用元:10105459-a-bride-s-story-vol-1

●アン
作画でもう4つ星よ。
全ての森薫作品と同じようにイラストは驚異的だし、歴史的なディテールも凄くリサーチされてるわ。
全ページ、見る喜びに溢れてるの。
それに日々の生活の描写全てが興味深いわ。
物語自体は凄いという程じゃなかった。
思うに、作者は色んなものを洗って綺麗にした”いい話”を描きたかったのかも。
作者が20歳のアミルと彼の12歳の夫のロマンスを中心に据えているのは明らかね。
過去の物語に入り込むのは苦労したわ。
でも、その苦労を通り抜けたら…アミルの内面に入り込むことが出来たら物語はぐっと良くなると思う。
彼女は別の部族にただ一人嫁いできたけど、それによって苦労しているようには見えないわ。
まだ子供の夫に困ってもいない。
彼女は新しい家族に合わせる心配はしてないのね。
もうちょっと外部からの摩擦か、内部闘争があればこの話はもう少し盛り上がると思うんだけど。
●ダニエレ
このシリーズは同じ作者による前作『エマ』と同じように、綿密なディテールとリサーチがなされているわ。
作画は傑出している。
私は森先生が作品に注ぎ込んでいる大量のディテールにいつも感激しているの。
舞台は19世紀のシルクロード、中央アジアはカスピ海付近のの新婦についての物語よ。
彼女の夫は興味深い事に彼の一族では一番若い、スイートな12歳の少年なの。
彼女自身は20歳で、彼女の一族では結婚するには老いすぎていると思われていたの。
物語は彼女が新しい家族との生活に適応していく様子と、その時代の人々の暮らしを紹介しているわ。
●ジョイ
19世紀の中央アジア、20歳のアミルは山を越えた先に住んでいる12歳のカルルクと結婚する事になったの。
アミルは彼女の新しい家族に上手く折り合っているけど、アミルの家族が自分たちにより有利な組み合わせにするためにアミルを呼び寄せようと決めるなど、快適な生活は脅かされそうだわ。
物語と作画両方にリッチな歴史的ディテールが盛り込まれてて(特に作画!森薫はリサーチする事が好きなのね)、特に素晴らしいのが魅力的な女性達と悠久の暮らしのバイブ。
森薫が日々の暮らしと作画に注力している所が好きよ。
物語のスタイルはちょっとスローすぎるかもしれないけど、森薫の前作(エマ、シャーリー)のファンだったらきっと楽しめると思うわ
●メリー
『エマ』の作者の作品よ。
20歳の花嫁は12歳の花婿に嫁いだの。
彼女達はは中央アジア草原地帯の半遊牧民族よ。
(彼女の一族は唯一の半遊牧民族で、彼(花婿)の方は数世代前にそれを止めているの)
彼女の家族が彼女を連れ戻そうとする所でプロットがやって来たように見えるけど、『エマ』と同じように、この作品の魅力はプロットよりも複雑で愛情溢れたディテールによって描かれた家庭の描写とゆっくりと進む(2人の)関係の進展ね。
アミルの新しい家族は祖父母を長として子供たち(1巻の終わりでその内の数人を見る事が出来るわ)と彼らを研究している人類学者。
一族は彼の事を怒りつつも許容しているわ。
日々の作業には兎や狐を狩り、羊の群れを番して家の材料を作る事も含まれているわ。
森薫は狩りが上手い事は家事が上手い事と同じくらいの評価になるという事を描いてた。
それと彼女はエキゾチックな服に対して、英国ビクトリア朝の服と同じくらい惚れ込んでいるわね。
私はアミルが普段着ている服はむしろ彼女の新しい家族とのお見合いや結婚式の時に着る服なんじゃないかと思ったくらい。
宝石とか、狩りの邪魔になるんじゃないかしら。
20歳のアミルは新婦になるには年をとりすぎていると思われているんだけど、カルルク(責任感があって親切で、末子相続の決まりがある部族だから家督を相続する事になっているの)はそんな事全く気にしていないの。
彼女は世話焼きで如際無く指示を出すから花嫁と言うよりは姉という感じだし、彼女の若い夫が彼女に擦り寄ろうとした所なんかは母羊の下に潜り込んできた子羊みたいだったわ。
これは『エマ』ほど私の心を奪ったわけじゃないけど、これが盛り上がる時間を待とうと思う。
年齢差カップルのせいでちょっと低い評価になるけど、それの扱われ方に関してはオーケィよ。
カップルは本当にお互いを好きに見えるし、お互い親切だから。
アミルはカルルクを口説こうとして失敗したけど、それは彼女の欲望からというよりも、新しい家族に加わりたいという気持ちから出ていたみたいだったわ。
それに…カモーン、彼はまだ12歳なんだから!
それが歴史的に正しいのは分かってるんだけど、現代の作品でのハッピーなロマンスとして扱われている事にまだ対処しきれてないのよね。
森薫が本当にロマンスを描きたいと思っているなら、タイムスキップする事を願うわ。
ハードカバーなのがナイスだし、値段もオンライン価格としては普通な所もいいわね。
これは好きだけど、1冊に17ドル出そうとは思わないから。
それと、最後に盛り上げるために
●ザ・ゴールデン・ウィッチ
2008年に日本で連載が始まってからずっとこれを待ち続けてきたのよ。
この作者を説明すると、前作はアニメにもなったビクトリア時代の英国を舞台にした『エマ』よ。
この新作は歴史的な日常系作品で、舞台は数世紀前の中央アジアでモンゴルの近く。
作者は産業が発展する前の時代の物語を描く才能があるわ。
YenPressは全て完璧なままで(素晴らしいパッケージは言うまでも無く)私達の元に持ってきてくれた。
私が森薫のスタイルで何が好きかと言うと、作品の流れがゆっくりとしてる所だと思う。
それは次の章を読みたいときにはフラストレーションが溜まるし(日本では毎月連載してる)、単行本が出るのは1年に1回か2回なのよね。
中断が無ければ。
とにかく、彼女の作品でデジタル化と常時接続で日々から分刻みにまで進化た現在と比べて、昔はどれだけゆっくりと物事が行われていたかを感じる事ができるわ。
(それは別に悪い事じゃないけど、私の言いたい事は分かってくれるわよね)
この作品では登場人物によって作られた料理を実際味わう事が出来るわ。
服は女性達によって織られ、男たちはパイプを燻らすの。
早い展開の方が良いと考えられ(出版社がそうしてきて)、原作者と作画のコンビが多い今の漫画マーケットではなかなか見られない物よ。
YenPressは森薫の第1巻をラブリーで艶やかなハードカバーで出版してきた。
真剣な話、今までも彼らが好きだったけど今では彼らのしてくれた事を愛してるくらいよ。
凄くハイクオリティなインクと紙を使っていて、森薫の作品を安っぽくさせていない。
正直言うと、このクオリティを『エマ』に使ってくれたら、その時こそYenPressがこの巻を出した甲斐があった事になるわね。
これは日本のオリジナル単行本をくだらない物に見せる位よ。
アミルの物語は別の部族から若い男の下に嫁いできた彼女の伝統的な服について語っているわ。
お見合い結婚は(日本でも)人気がある訳じゃないけど、作者はこれを大きな年の差があるカップルが出会い、お互いを好きになっていく方法として使ったの。
花婿の側には昔ながらの疑り深い親族がいるんだけど、アミルの正直さと快活さ(彼女の年長者への敬意も)は直ぐに彼らを魅了していくの。
彼女の父親と兄弟が彼女の元にやってきた時、彼女の新しい家族が彼女をまるでそこで生まれ育ったかのように護っている事に凄く満足していたわ。
森薫がこの物語を作るためにその地域と時代をリサーチしたのは明らか、ペンの軌跡、インクの乗り、キャラクターの表情なんかでそれを知る事が出来るわ。
風景に関しては言うまでも無し、まるで昔のモノクロパノラマ写真のフィルム見てるよう。
彼女の作品は美しく、日本の漫画市場がこの10年で失ってきたものをリフレッシュしているわ。
彼女は自分の信念を固く守っていて、亀は兎とのレースに勝つ事、1年に単行本を5冊出すよりも作品のクオリティの方が大事だという事を知っているのよ。
だから私は彼女を賞賛するの。
もしあなたが暖かい歴史の日常系作品、息苦しいロマンス抜きの物を探しているなら『乙嫁語り』を選んでみて。
次巻が北米で出るのは10月か11月であるべきね。
それがハードカバーになるかどうかは分からないけど。
期待する事にしましょう。

●スィート・ピー
2人の女性弓手が出てくる作品は嫌いになりにくい。
この本はカスピ海周辺の日々の生活、アミルの習慣と彼女の新しい家族の習慣の違いを描いている。
作画のディテールは驚くほど凄い。
もっとも、時々大人の女性は見分けがつきにくいが。
これは驚くほど興味深く魅力的なポートレートだ。
●スティーブン
しっかり調べられた豊かな時代描写のディテールが物語を広げているね。
『エマ』以降、森薫は19世紀の中東アジアの花嫁と彼女の新しい家族について多くの改良を示したよ。
他の漫画出版と違い、YenPressは森薫の芸術を見せる事に成功するためにより大きいサイズ(普通のペーパーバックサイズ)でこれを発行したんだ。
●エリン
私が漫画を読むようになって一番ゴージャスなイラストの漫画ね。
話を作るうえで森薫は入念なリサーチと感動的でロマンチックなドラマを用意したわ。
YenPressnによる製品はファンタスティック。
これは贅沢なパッケージの中に驚くほど詳細な作画が入っている美しい限定本よ。
どんなに薦めても物足りないくらい!
●ショーン
日本のタイトルについて理解しているわけじゃないけど、英語のタイトルにはそれほどそそられなかった。
でも、タイトルにもかかわらずこれは素晴らしい漫画だったよ。
森薫の作画はゴージャスでコンセプトは魅惑的だ。
そして物語は少女漫画でしか成しえる事の出来ない、ハートウォーミングでキュート且つ真面目な展開だ。
●ジャネット
この作画が大好き!
物語りも楽しんだし、星3つ半を付けるわ。
家族の関係は好きだけど、森薫がアミルと彼女の若い夫との年齢差をどう解決させるのかまだ分からないのよね。
この漫画には可能性があると思うわ。

森薫の作画に関しての評価は鉄板状態。
あの緻密さでどうやって毎月描けるんだ…
意外とアミルとカルルクの年齢差を気にしている意見が多いようです。
日本だとあの時代だったらありえるでしょ、むしろ有りでしょ、いやこれじゃなきゃ駄目だろという感じなので(断定)微妙に受け取り方が違うみたいです。
おねショタはまだまだニッチなジャンルか…
物語としては物足りない、という意見もありましたが1巻はまだまだ導入部でラストにようやく動きが見えてきたかな、という所ですから。
2巻のカルルクの漢っぷりと2人のラブラブシーンを見たら意見が変わるに違いない。
管理人としては基本的にアミルとカルルクがキャッキャウフフしてくれてればそれで満足なのです。
北米版は版が大きく(15.7cm×22.3cm)ハードカバーと言う事なので日本の単行本よりも豪華使用のようです。
(値段も17ドルと高価ですが)
森薫の作画ならこのサイズの方が良いかも。
…あ、3巻まだ買ってなかった…
※Amazon情報によると北米版『乙嫁語り』は2011/10/25発売予定、これもハードカバー仕様との事。
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