失望はさせない、海外のファンによる『寄生獣』のレビュー

寄生獣


ある日、空から未知の生物が地球へと飛来してきた。
その生物は人類へと寄生し、その脳を乗っ取る。
その生物が人類に寄生した時、本能として受け取るメッセージがあった。
「この種を食い尽くせ」と―――

主人公、泉新一はある日うたた寝をしているところを寄生生物に襲われる。
右腕から進入してきた生物を、脳に寄生する前に辛くも防ぐことに成功した新一。
しかし右腕はその生物に寄生されることになってしまった。
新一はその生物にミギーと名づけ、こうして新一とミギーの奇妙な共生生活が始まるのだった。

アフタヌーン増刊からアフターヌーン本誌で1990年1月号から1995年2月号にかけて連載され絶大な人気を誇ったこの漫画、作者・岩明均の持つ乾いた描線と寄生生物のシュルレアリスムのような造形、ホラーを含むアクション描画、そして命とは何か?を問いかけるテーマが絶妙なバランスで組みあがった傑作SFです。

海外でも翻訳版が出版され、その際日本とは左右逆の開きのためミギーがレフティ(左)と改名されたのも有名な話です。
さて、そんな寄生獣(英語圏だと『Parasyte』)海外ではどのように読まれているのでしょうか?

wikipedia
ソース


44人中33人がこのレビューが参考になったと評価しています

さあ、『Parasyte』(寄生獣)の話をしよう。

物語
確かに最初にあらすじを読んだときは、ありきたりで何処にでもあるような話に感じるかも知れない。しかし物語が進むにつれ、その内容は重厚にそして美しくなっていくのを自分は知っている。
これは人類が何かに寄生され、それが悪影響を及ぼすとき、何を確認しどう動くべきかを驚くほどに示している。
例えば寄生された人が妊娠している時、あるいは人を殺す気がない時等々…

また、この寄生獣では別の生き物が体に寄生してきた時、どのように寄生していくのかを活き活きと描いている。
いうまでもなく、このような生物が私やあなたの中にいるとしたら、それは素晴らしくクールで面白いことだろう。
物語は読みやすい速度で展開し、けっして減速しない。
ここで小さな注意:私の友人の一人は午前2時までこの漫画を読み「次の章で一旦止める」と言っていたが、結局彼が全話読み終えた時は4時を回っていた

ART
この漫画の描画について、シンプルすぎて不完全だと感じる人もいるかもしれないが、この漫画の表現は上手いと思う。
作者の岩明均がしっかりと表現しているものの一つがその"眼"であり、誰が寄生されていて、誰が寄生されていないのか、見るだけで分かるように表現されている。

もう一つの素晴らしい点は寄生生物が変形していく表現だ。寄生生物が体を乗っ取ると、その体を彼らの必要に応じて形状、体力を変えることが出来る。
それは彼らが頭部を刃に変えたり、巨大な口にしたり、その他様々な理由によって行われる。これは不気味であり、独創的だ。
この変形は本当に素晴らしい表現だ。
また、テンションを上げるためのコマ割テクニックに関して作者は素晴らしい技量を持っている。
その一例が新訳版の2巻、あるいは旧訳版の4巻にある。(単行本には2種類ある)
新一が10フィート(3m)の壁を跳び越す時、そのコマは新一が飛び越すまで大きくなっていき、次のページの半分使ってその着地を描く。信じてくれ、これは君の体にアドレナリンをポンプで送り出すだろう。

登場人物たち
まず新一、彼は少年漫画によく見られる英雄の原型となる典型的な十代の少年だ。しかし新訳版の2巻、旧訳版の4巻を読めば分かるが彼は変わり始めていく。寄生生物は新一の右腕だけでなく、彼の体の20%に達するほど体内にばら撒かれていき、新一は自分の体から寄生生物を切り離さなければいけなくなる。
そして新一の人間性は徐々に失われていき、それを取り戻すために闘わなければいけなくなる。
新訳版2巻の最後から小さな三角関係も始まっていく。これは全ての少年漫画に三角関係が必要だからだ(これは皮肉だ。分かってると思うが)でもこれは上手い描き方だと思う。

満足感
自分はこのシリーズには満足していない。もちろん内容は完璧だ。君も翻訳のミスに気づいたとき、同じように感じるだろう。それ以外は素晴らしいの一語に尽きる。私がこの漫画の旧訳版を読んだのは12歳の頃で、その時からこの思いは今に到るまで頭の中を巡っている。新訳版がDel Ray(アメリカの出版社:wikipedia)から出版されている今、これ以上のものを買う機会は今後ないだろう(旧訳版の2巻分を1巻にまとめており、値段も13~14$とお得だ)

もし君が少年漫画のファンであり、とりわけアクション物に眼が無いとしたら是非チェックして欲しい。これを好きにならないとしても、失望はしないはずだ。

総括
私はこの漫画を10点と評価したいが、そうすれば私は正直であるとは言えなくなってしまうだろう。それゆえに得点を付けるなら9.5点にすると思う。
私にとってはその減点理由は翻訳ミスが時々見受けられるというものであり、ある人にとってはシンプルすぎる描画がその理由になるかもしれない。
しかしながら、その魅力はマイナス点を補って余りあるものであり、みんなの求めるものがこの漫画にはあるだろう。
物語のプロットよりもアクションが好きな人、深い物語が好きな人、人間がぶつ切りにされるのを見るのが好きな人、全てがこの中にある(もし性的なユーモアが好きだとしたら、それすらもある)

もしあなたがそれほど漫画を好きでないとしても心配はいらない。私は漫画を読んだことが無い、そもそも漫画が何なのかすら知らない人達にも薦めた事があるが、全ての人たちが本当にこの漫画を気に入ってくれた。彼らの一人は自分用に新たに買ったくらいだ。他の人たちは次の新刊が出たときに私が買うのを待っている。

もし気になったのなら是非読んでみて欲しい。
(気に入らなかったとしたらその理由を教えてくれ。自分はそれを知りたい)


大絶賛です。
そもそも海外で旧訳、新訳が出るということ自体が海外での人気を物語っています。
こちらのサイトによると新訳版は開きも日本と同じになっているようです。
(だとするとミギーもレフティじゃなく、ミギーのままなのでしょうか)
他にもamazonのレビューを見るとTokyoPopの出した旧訳版は人名が変わっていたりと色々評判が悪いようです。
(※レビュアーが指摘しているように新訳版も誤訳があるようですが)

なんにせよ管理人も大好きなこの漫画、ここまで褒めてもらえると嬉しくなってきます。レビュアーの指摘するとおり、寄生物というのはSFにおいては決して目新しいジャンルではないのですが(共生物も)それでもここまで寄生という行為そのものを描いたものはそう無いのではないでしょうか?
海外のSFで寄生をテーマにした作品だと、『盗まれた街』、『人形つかい』、『遊星よりの物体X』なんかが有名ですがこれらは全て異星人は敵であり、いかに倒すか、がメインとなっています。
共生物としては管理人の知る限りだと『たったひとつの冴えたやり方』、『地球の長い午後』等がありますが(後者は厳密に言うと違うかもしれませんが)これらの小説も共生そのものは作品のキーではあるものの、そこまで深く追求しているわけではありません。
(それとはまた別のテーマがあり、それが良いのですが)
個人的には寄生獣はこれら古典SFと比較しても、遜色が無い読み応えがあると思っています。
ヒストリエのような歴史物もいいのですが、作者にはまたSF物を描いて欲しい、等と思っているのでした。

※寄生獣は米amazonのレビューでも大絶賛されています。こちらもいずれ翻訳してみようかな…

そういえば寄生獣を映画化するという噂、どうなったんでしょうか?




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tag : 海外の反応翻訳寄生獣

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非公開コメント

なんだか微妙に筋を取り違えられてるような。。。
翻訳の問題なのかな?

初めて読んだが小学生の時で軽くトラウマ

俺も好きだったなぁ。
いい作品は国を選ばない。

amazonのレビュー、期待してます。

この話は敵である寄生獣よりもむしろ
人間側の心理描写に背筋が凍る思いをしたな

アニメ化して欲しかったな、これ

ミギーが徐々にいとおしくなったのを思い出す
どっぷりはまって読んだなー・・・・
ちょうど今、古い漫画の整理をしてて息子にうしおととらを読ませてるんだけど
次はこれを引っ張り出してきて読ませてやろう

映画化はまだなのか?

グロすぎてアニメ化無理w
最高の漫画の1つだよなあ

実写映画化の話はは5、6年前だっけか
実写化しやすい作品だと思ってたけど、塩漬けされてんだろうね

個人的には漫画ベスト1です
翻訳にもあるけど早く次の巻が見たいとこれほど思った漫画は無いですね

海外だと絵が無理っていう人が多そうだ

シンプルな絵だがそれを全く感じさせない
本当に作者一人で書いてるなら凄いね

最終回までの盛り上がりがすばらしかったな。
心に残る漫画の一つであることは間違いない。

今度読んでみないといけないな。

懐かしい

規制銃から入って女神様に出た俺。ありがとう寄生銃

翻訳乙かれさまです!
管理人さん同様、私もこの作品が好きなので、 
海外の反応を知る事ができるのは嬉しいです。
是非、AMAZONのコメントもおねがいします~

ミギーや女教師の感情の変化、
赤子を大切にしたり、昆虫の様だったミギーが
人のように反応するように成った所が、
此の漫画の分岐点だったと思う。
どちらに進むかで大きく話が変わっただろうが、どちらに進んでも読も応えのある名作だったと思う。

乗っ取られた母親の火傷の傷とか、田辺の赤子への愛とか、当時はいろいろ衝撃的だったな。

寄生獣の寄生の意味が最後のページで分かると言うのが凄かった。
キャラクターがちょっと独特だからとっつきにくい人もいるかも知れないが、若い人にも読んで欲しいよな。

新約版のミギーはmigiだったな。
migyにしても良かったと思うのだが・・・・

今のエコエコ詐欺ブーム見る度に
寄生獣の中で田村玲子が言ってた
「『地球に優しい』なんて勘違いセリフもあるけど」
とかいうセリフが脳内再生される

翻訳の間違いってのがどこのことなのか気になるね

映画化権買ったのは作るためじゃなくて似たようなプロットの他の映画に文句言われないようにするため
などという話も聞きますが、ハリウッドが実写化なんかしようとしたらドラゴンボールエヴォのような悲惨な状態になるのが見えるからこのままの方がいいかもですね。

1話目で絵がグロすぎて読むのやめたw
でも友達がえらい勧めてくるから我慢して読んでみたら面白すぎて3日で全部読んだ
でもやっぱり絵がダメでもう1回読もうとは思えない最高に面白い漫画

「アニメ化されていない名作」と聞くと最初にこれが思い浮かぶなぁ…

アフタヌーン連載中の誌面脇の読者コメントが熱かった。
後半の頃は、まだ自分はやっていなかったがニフティ等のパソコン通信でも熱心に語られていたのかもしれないな。
これがもし最近でも、インターネットで注目を集める要素は満載だったといえるんじゃないかな。

日テレ辺りで マッド遣ってやってくんないかな。
深夜と云うことで 規制緩くして 放送版は過激なシーンには
色抑えて、商品化の際にディレクターカット版出すと云うことで。

「Aさん」の校内殺戮の現場で主人公がパニクる場面は読んでいて呼吸困難に陥りそうなほど衝撃だったし、乗っ取られた母親と対峙する場面では涙が止まらんかった。
作者の演出に気持ちいいほど翻弄された作品。SFとしても心理ドラマとしても卓越した傑作だと思う。

>海外のSFで寄生をテーマにした作品だと
ハル・クレメントの『20億の針』が子供向けにたくさん出ていたので筆頭でしょう。
『寄生獣』は、これに一番近いですね。続編の『一千億の針』のネタも入っていますから、これのフォロワーだと思って良いでしょう。

ミギーが学習してる姿がかわいくてかわいくて…

キャラクター達の日常をちゃんと書いてあるからミギー達の様な非日常的な存在もリアルで生々しく感じるんだよなぁ
この作者の漫画は全作大好きで集めたが、どれも良いね

アマゾンレビュー楽しみにしてます!

田村玲子が最後母親として(?)赤子を護ったのがなんだかんだと印象深いな。

昔通ってた歯医者の待合に有ったけど、表紙グロくて見ない様にしてたなぁ

俺はモーニングの風子のいる店で岩明均を
知ったなぁ。
画は受け付けなかったけど、話は面白いって
思ってた。
俺の中でシェイプアップ乱の人と同類。
寄生獣を知ったのは最近。
なんだか見たことある画だな~って思ったら、
風子の人だった。
あの人なら、このくらいのクオリティのマンガは
書けるだろうな、って納得した。

これ、当時日本ではやりだった「環境破壊を進める悪の人類をこらしめます」ってイデオロギー知らないと理解できないだろうね。
あらゆる価値が相対化され、カルトが横行し、風紀が乱れまくってた90年代日本では、環境保護はゼッタイ正義だったわけで。

まぁ侵略者が地元民の罪悪感につけこんだり、身勝手な正義感ふりかざして自らの行為を正当化するところは海外勢力に
深く静かに侵食されてる今の日本人に受けない事もないとは思うが、今となってはただの悪趣味なイデオロギーマンガだよね。
映画化する価値まであるかどうか?やはり後援は某団体とかになるのかね・・。

Parasyteってタイトルだったら「寄生虫...いや寄生獣か」って感動的なセリフもないんだろうな

映画化

ターミネーター2で液体金属のキャラが寄生獣と似た変形をすることから(鋭利な刃物なったりなど)
真似をしてる!!!とか言われないために映画権を買ったと聞きました。
 
 

大好きです!!!

いつも本当に楽しく拝見させて頂いておりますm(_ _"m)

僕は中学1年の時にこれを見て以来、最高のマンガだと思っています。

こういったところに書き込むこと自体ないのですが、寄生獣のレビューだ!って思ったら

いてもたってもいられなくなり、書き込まさせていただきました><

amazonのレビュー、本当に期待してます!!

いつもありがとうございます(o*。_。)o

※欄
>今となってはただの悪趣味なイデオロギーマンガだよね。
物語後半では「環境破壊をやめろ!地球に優しく!」という風潮に対する強烈な皮肉が何度も描かれているだろ。
もっと素直な目で読み直してみろ。

岩明氏の絵はもちろんヘタではないが、割とシンプルでマンガ的な絵だったから
この作品はいい感じでグロになり過ぎずよかったと思う。
同じように映画化でも、CG導入以前の特殊メイクなどでやってくれれば面白った
んではないかと想像してしまう。よい意味でチープな、「有性からの物体X」みたいに。
今映画化したらもちろんバリバリCGでよく出来たものになるのだろうけど、なんか
しらけてしまいそう。

アニメ化してくれーっ!

グロさはアニメ化しない言い訳にならない。ジョジョの奇妙な冒険もついにアニメ化したんだから

映画化よりドラマ化のほうが良さそうだ

連載当時、主人公は武田真治が良いなと思ってた。ナイトヘッドがあったからw

>23:22
当時の日本の環境イデオロギー知らなくても理解できると思うよ。

環境保護団体が嫌いな自分、2014年の今でも、基本的に人間は増え過ぎだと思うし、増え過ぎは良くないと単純に思える。

染谷将太は目に意思のチカラがあり過ぎて、初期シンイチの軟弱さには
不釣り合いだと思うけど、それでも良い人選だと思うな。
伊豆以降~カナとのくだり辺りのシンイチとはスゲー合うと思う。
ひさびさにテンション上がった。

大好きな漫画で実写映画化を妄想してたけど、どうしても良い役者が
思い浮かばなかったんだよね。

後は監督.......どうなんだろね?
役者もロケーションも日本で、監督だけ外国から招聘できたらな。
そんな資金とてもペイはできないんだろうけど。
主人公が日本人だから、ラストサムライみたいなことも出来ないしね。

もうすぐアニメ、放送だね。
まさかあんなんになるとは思わなかったけど。
とりあえず1話は見てみるさ。

>映画化よりドラマ化のほうが良さそうだ

映画化のためのアニメだから
信長協奏曲のように中途半端になりそうだな

ただアニメだと原作使用料で儲けられない代わりに
グッズ展開が望めるからなぁ
海猿なんて原作使用料が、わずか100万円で全て持っていかれる訳で
映画見て原作見ようなんて思わないからな

※37
>>「環境破壊を進める悪の人類をこらしめます」ってイデオロギー
前半部分には賛成だな。「地球にやさしい」なんてまやかしを否定
するために寄生獣は書かれた。

しかし後半部分は読みが浅いな。
>>今となってはただの悪趣味なイデオロギーマンガだよね。

人類とパラサイトの中間に立つシンイチは、一度は人類を見捨てる。
しかしそこから更に苦悩することで、人とパラを超えた視点を得る。
ミギーの「心に余裕のある生物」とは、シンイチの思考の柔軟さに感嘆した言葉だろう。

悪趣味なイデオロギーを否定し、受け入れ、より高度な地平へと昇華させた。
だから、>>今となっても考えさせられる名作マンガだよね。

>共生物としては管理人の知る限りだと・・・
古典SFで一番有名なのは、20億の針 だろうね。
これにインスパイアされてか弓月光とかが漫画を描いてたな。

日テレでマッドハウスを4年前に言い当てている人がいるな
すげ〜わ
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